1.サメとはんぺんと気仙沼と吉田商店(吉田 健秀)

―カネヒデ吉田商店さんは、サメを扱ってらっしゃるんですよね。

お仕事の内容を教えてください。


吉田:震災前は100%サメのみの仕入れでした。

サメの仕事というのは、サメを仕入れて、フカヒレの製造と、サメを3枚におろして、ということをしています。

サメ肉って、すり身にして、「はんぺん」の原料になるんです。


―はんぺんって、サメ肉からしか作られないんですか?


吉田:いい「はんぺん」は、サメ肉だけで作られています。

デパートの催事などで販売されていたり、築地の場外で売られている

1個400円位のちょっと高めの「はんぺん」は、サメ肉で出来ています。

街中の小さな蒲鉾屋さんでも、自分のところでサメ肉を使って作っているところもあります。


―「はんぺん」が、サメ肉で作られているなんて知らなかったです。


吉田:サメ肉で作ると、空気を含みやすくて、口当たりのいい、フワフワの「はんぺん」が出来るんです。


―それって、昔からですか?


吉田:それこそ、昔はホントにサメ肉だけで、「はんぺん」を作っていました。

気仙沼でもサメがいっぱい獲れて、東京湾なんかでもサメが沢山獲れたそうです。

サメが獲れた時に、「フカヒレ以外に身はどうする?」ってなった時に、そのまま使おうとすると、脂身も無くて、味も素っ気もなくて美味しくないので、「すり身にしよう。」となったそうです。随分昔からの話です。

「はんぺん」は、東京、関東の方でしか食べない食べ物だったみたいです。


―「はんぺん」に使われるサメは1種類なんですか?


吉田:気仙沼で大量に揚がるサメは3種類です。

でも、蒲鉾や、「はんぺん」の材料になっているのは、ヨシキリザメと、アオザメっていうサメの2種類ですね。もう1種類は、モウカザメって言って、スーパーの鮮魚コーナーで食べて美味しいので、普通に切り身として売っています。


―切り身として美味しいから、すり身にはしないということですね?


吉田:すり身にしなくても大丈夫ってことです。栃木県では、モウカザメはモロと呼ばれています。

サメの身はアンモニアを含んでいて、日持ちがするそうで、昔から海から遠いところで食べられている食材で、山の方でも食べられていました。広島の山の中でもそういうサメ肉を食べる文化があるみたいですよ。


―他の港では、サメも水揚げされるけれども、気仙沼では、この3種類が水揚げされるということでしょうか?


吉田:日本に揚がるサメの85%は気仙沼で水揚げされています。他のところでは、サメが揚がっても取り扱いに困ってしまうと思います。


―処理に特別な技術がいるということですか?


吉田:いえ、特別な技術ではないですが、気仙沼は、水揚げが多くて、気仙沼―関東は、流通形態がしっかりしていています。また、気仙沼には、サメ専門の仕入れ加工業者や、サメ肉の解体業者がいっぱいいます。

サメを買ってくれるお客さんという意味でも、「はんぺん」を作っている大きな会社さんとか限られてしまうんです。だから、例えばちょっとだけ、別の地方で水揚げされたとしても、ヒレの加工技術がある訳では無いし、サメの歯が鋭いので網はボロボロに壊されちゃうし、パワーもミラクルですから、取り扱うのが難しいんです。


<続く>

さんりくみらいの想い

私たち株式会社さんりくみらいは三陸・気仙沼で生きる作り手と全国の食卓を笑顔で結ぶために、想いを共にする仲間たちと会社を設立しました。ECサイト 極上市場「三陸未来」の運営を中心に、リアルな販路開拓やプロモーションの実施。さらにパートナーとなる作り手(生産者、加工業者)を募り商品開発、技術開発を共に行い切磋琢磨できる環境を作ります。