―私は、一般消費者の観点で、スーパーで販売されている商品と、さんりくみらいで作っている商品の違いが具体的にわかっていなかったんです。でも、他社の大規模な工場だと、海外からの輸入品で、冷解凍が繰り返されて鮮度の落ちた魚が混じってきてしまうが、さんりくみらいでは1回しか冷解凍していないことや、さんりくみらいの牡蠣は、ただの塩水ではなく、滅菌海水に漬けてあるなど、そういう違いをお聞きすることで、さんりくみらいの商品と他の商品の違いが具体的にイメージできるようになってきました。
藤田:そこが、まだ発信しきれていない部分です。これからの伸びしろとも言えますね。
私が人からよく言われるのは、直接人と話している時は色々しゃべってお伝えできるんですが、ホームページとか、リーフレットでは全然伝わってこないよ、という(笑)
―自社でやっていることを説明するだけじゃなくて、水産加工の業界全体で、一般的にはこんなことをやっていて、味や栄養、安全性に影響が出ているんだよ、ということを商品の説明に入れたりするのは、なかなか難しいですよね。
藤田:そうですね、そこがちょっと微妙な部分ですね。
ただ、やっぱり、今の日本の衛生管理には、少し気になる点があります。
スーパーのカット野菜もそうですが、「塩素系の水で洗わないといけない」というルールがありまして。食中毒等のトラブルのリスクを無くしたいというのは分かるのですが、どうしても味や栄養価が落ちてしまうんですよね。
―食中毒は防げても、長い目で見た時に、発がん性物質や添加物があるなどの、長期的なリスクは、防げているかわからないですよね。客観的に、食品の取り扱いについての取り組みが、健康や自然に対していいものなんですよ、というような評価を受けるなど、目に見える指標があればいいな、と思ってしまいます。
藤田:手をかけないで食べられる商品も、もちろん今の世の中には必要だと思います。
子供たちが小さかったり、仕事をしていたりすると、調理をする時間が無くなってしまうのもわかるので。。
でも、「調理の工程を楽しむ食材」も、必要だと思います。
やはり、料理を作る過程というのも、「食べること」、食事の一部じゃないですか。
そういう食育環境も、作っていきたいな、と思うところがあります。
そうじゃないと、魚は切り身でしか流通できないとか、確かにそのほうが手っ取り早くて、効率がいいのですけど。
この前、ある水産業者さんの話を聞いたんですが、考え方が私たちとは真逆だったんです。
「なぜ、生のものをそのまま送る必要があるんですか?」という。
その業者さんのところでは、「CAS冷凍※」という高度な冷凍技術を持った冷凍庫を使っています。磁力を使って、振動で瞬時に冷凍させて、食品の細胞膜を保って、ドリップをなるべく出ないようにするんです。
※CAS冷凍:Cells Alive System冷凍の略称。従来の冷凍技法による食品の凍結融解に伴う食味の低下を大幅に低減することを可能にした冷凍技術。水を瞬時に凍らせることで氷晶化を防ぎ、細胞膜を無傷に保つことを可能としている
だから、生で賞味期限が短いものを流通させる必要がない。生と同じレベルのものを、冷凍食品でできるからです。
あとは、魚の顔や骨などの、不可食部分のゴミが出ない。
魚をカットして、食べるだけの形、刺身にしたものを、一人前ずつ冷凍しているんです。
マグロで言えば、5切れずつとか。
そうすると、消費者は、流水解凍で5分くらい解凍して、袋から出して食べるだけになるんです。
さらに、海外へ輸出する場合の輸送コストなどを考えると、魚は、6割はゴミになってしまうのですが、このやり方だと、4割の重量でいいので、輸送コストの削減にもなっているんですね。
手間がかからない、ゴミがでない、賞味期限がない。
―良いことずくめですね。
藤田:ただ、「食べるだけ」になってしまうんですよ。作る過程がわからなくなってしまう。
―効率化を求めるのはすごく大事なことですが、一方で、さきほど藤田さんがおっしゃっていたように、「食べる過程、作る過程自体も、食の一部ですよね」、という、人の心の豊かさを大事にする方向も、すごく大事な気がしますね。そうでないと、子供が、「魚」って聞いたら切り身のことしかイメージできなかったり、「魚って骨があるんだ?」って聞いてきたりするように、なってしまうかもしれないですよね。効率化の取り組みも重要なんですが、一方で、さんりくみらいさんの思う価値観も、とても大事というか。。
藤田:はい。だから、私たちは、私たちのやり方で、旬のもの、直送のものを、売っていきたいと思いますね。
―両方の方向があることで、色々とバランスが取れるかもしれないですね。
藤田:そうですね。お客さんのニーズも、人によって違うところもあると思うので。
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