藤田:よく言われるのは、温暖化の影響で、
2040年に、海で採れる魚で食べられるものが無くなるだろう、ということです。
ここ5年くらいで、全国の漁師が感じていることだと思うのですが、海がおかしいんです。
魚が獲れなくなってきているところが大半です。
そうかと思うと、たまに、一つの種類だけ馬鹿みたいに獲れたりします。
で、すごく豊漁にはなるんですが、1年で終わったり、という変な環境になっています。
―2020年、気仙沼で、サンマがあまり揚がらなかったとニュースになっていましたね。
藤田:史上最悪ですね。
でも、サンマの収穫時期の前半にあまり揚らなかった割には、今の時期も、サンマが獲れているんです。
ただ、120g以下が9割で、小さいサンマが大半なんです。
小さいサンマを獲らなければ来年に繰り越せるのですが、日本の船が獲らなくても、
外国の台湾や中国籍の船が獲ってしまうというのもあって。バランスがすごく悪い。
―日本の領海には外国籍の船は来ないけど、日本の領海から出て行ったサンマを、外国籍の船が漁で獲るということですね。
藤田:そうですね。
―サンマは、冷たい水を求めて移動するのですか?どのような感じで回遊していくのでしょうか。
藤田:冷たい水を求めていきますね。
だから、温暖化の影響で、水温が上がってきているので、サンマが南下せず、北のほうに留まってしまうんです。
2020年も、サンマの群れが北海道のずっと沖のほうにいたので、そこに漁をしに行ったとしても、遠すぎて船の燃料費がかかりすぎてしまう。
また、戻ってこられなくなる可能性もあり、獲りに行けなかったんです。
今年、カツオも獲れなかったんです。
カツオは南から北上してくるので、九州あたりでも獲れます。
四国の高地や宮崎の船が多いのですが、
―土佐のカツオは有名ですね。
藤田:はい。
1月20日頃は、沖縄のずっと南で回遊していて、
3月、4月になるにつれて、だんだんカツオが北上していき、4月頃に千葉の勝浦でカツオが水揚げされます。6、7月になると、宮城の沖で獲れるようになる。で、さらに北上していって、北海道のあたりまで行き、その後、9月、10月頃に、北海道から南に下がってくるんです。
戻りガツオと言われているものです。
北海道のほうは餌が豊富だし、イワシを食べるので、カツオの身に脂がのります。
だから、戻りガツオは、「トロガツオ」と言われるくらい、脂がのっているんです。
今年、カツオが不漁だったのですが、中でも一番売れる中間のサイズが少なかったんです。
例年3,4kgくらいのサイズが一番取扱量が多いのですが、今年は、ピンガツオ※といわれる、1kgくらいのカツオか、
逆に、超特大といわれる5,6kgくらいのカツオがほとんどでした。
バランスがおかしいんです。
中間の大きさのカツオはどこに行っているんだ?という。
とにかく海が変です。
※ピンガツオ サイズが小さくて、売り物にできないカツオのこと
―世界的にも、二酸化炭素を削減していこうという取り組みがやっと始まった、というような状態ですよね。
藤田:二酸化炭素の量が年々増えていますからね。
魚にとって、水温の1度の変化は、陸での5度、10度くらいといわれるほど、影響を受けやすいんです。
だから、南の魚が、水温が熱すぎて北上して、食物連鎖のバランスが崩れています。
何かが増えれば何かが減るので。
サケが獲れないのは、南のブリが北上しているからで、ブリの腹を割ってみると、サケの稚魚が入っているということがあります。
今までいなかった魚がそこにいるようになって、ほかの魚が捕食されているんです。
生態系が変わってきてしまっています。
だから、三陸でも、今年、タコが豊漁だったりしましたが、タコはアワビが好きなので、アワビが採れなくなったりします。
タコかごにタコが入ってくると、アワビの殻を抱いていますからね。
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