6.漁師の仕事と変化(藤田 純一)

―藤田さんの年間のスケジュールと一日のスケジュールは、どのような感じなのでしょうか。


藤田:年間スケジュールは、

1月から5月まではワカメ、

6月から8月のお盆あたりまでがウニの開口(かいこう)、

9月から10月半ばくらいまでが、ワカメの陸(おか)での作業、

例えば、養殖いかだを直したり、種まきシーズン、つまり種の挟み込みを行ったりという感じですね。

11月、12月がお歳暮や宅配です。

震災前は、これに加えて、6、7、8月に海の家と、地引網の体験をしていました。


―震災後は、海の家と地引網はできなくなってしまったのですか?


藤田:はい。海の家が津波に流されてしまいましたし、

海水浴場自体が、2020年7月にオープンする予定だったのですが、

コロナの影響で2021年に延期になったんです。

防潮堤が2020年にやっとできたんですが、それまでは何もできなくて。

ちょうど震災前の年あたりから、コンビニが普及など、世の中の情勢が変わってきて、

海の家の売り上げはかなり落ちてきていました。

海水浴場への持ち込みが多くなってきていました。

あとは、家庭環境の変化ですね。

ほとんどがサラリーマン家庭となったので、来客が土日メインとなり、平日にあまり来なくなった。

あとは、長雨が続いたりという、気候の変化。

私が子供のころは、夏は雨が少なくて、すごく暑い日が続くイメージがあったんですが、

震災の前後頃は、7月いっぱい雨だとか、8月の10日くらいには低気圧や台風の被害が大きくなってきました。

海の家は自然に影響を受けやすい業態なので、なかなか難しいな、と思っていたところに、

震災が来たので、海の家を閉めるにはちょうど良いタイミングなのかな、と思っています。


―1年中通して休みなしのスケジュールですか?


藤田:そうですね。ほかにもタコを獲ったり、鮭を獲ったりしますね。

タコは、6,7,8月、10、11、12月が漁の時期です。

9月は、タコが沖に下がるので、昔から獲れなくなります。

たぶん、水温の関係だと思うのですが。


6,、7,8月は、ウニの開口(かいこう)があります。


―ウニの開口とはどういう意味ですか?


藤田:ウニやアワビは、毎日採れるわけではなく、地区によって、1か月に2回か3回しか獲れないんです。制限されています。

ウニは、朝の5時から7時の2時間。

一斉に始めるので、「日和見」という、天気を見る係の人たちがいて、彼らが、水の透明度や、波の無い、風が吹かない、天気が良くて曇り空じゃない日を選んで、月に2回か3回収穫の日を決めるんです。

サイレンと同時にスタートして、2時間後にはサイレンと同時に終了します。

アワビは、11、12、1月。それも、サイレンと同時に収穫が始まります。


―日程や時間を制限するのは、乱獲を防ぐためでしょうか。


藤田:はい。資源保護のためです。


―ウニって、海女さんが海に潜って獲ってくるイメージがあるのですが、どのような採り方をしているのですか?


藤田:地域によって違います。

ドラマ「あまちゃん」の舞台となった岩手県の久慈のあたりは、いまだに女性たちが素潜りして収穫しています。

久慈のもう少し下の地域は、私たちも同じようなやり方なんですが、船に一人か二人乗って、箱眼鏡という、四角い箱にガラスがついた眼鏡を、下の部分を歯でかじって固定させます。

大きくて長いシュノーケルのような感じです。

深さによって、1メートルくらいから、5メートルまでの竿を使って、一つずつウニを採ります。


―竿で採るのですか。


藤田:はい、竹の竿で。

竹の竿には、自分達で竹で作った「こべ」という鉤と竿をつなぐ接続部分がついているんですけど、ウニは2本の鉤でひっかけます。

アワビは一本の鉤でひっかけて、跳ねるような感じで採ります。


―シーズン前に採る練習をしたりはできるんですか?


藤田:練習は無いですね。

シーズン前に採ると密漁になって警察に捕まってしまうので。


―後継者育成はどのような感じでされるのですか?


藤田:開口に出るメンバーは、漁業権を持っている人の家族に限定されるんです。

新規参入の人たちも、漁業権がないといけない。

だから、ほとんど新規で入ってくる人はいなくて、息子とか、家の人だけですね。


―では、少子化の中、後継者の育成が大変になったりするのでは。


藤田:大変ですね。

さんりくみらいの想い

私たち株式会社さんりくみらいは三陸・気仙沼で生きる作り手と全国の食卓を笑顔で結ぶために、想いを共にする仲間たちと会社を設立しました。ECサイト 極上市場「三陸未来」の運営を中心に、リアルな販路開拓やプロモーションの実施。さらにパートナーとなる作り手(生産者、加工業者)を募り商品開発、技術開発を共に行い切磋琢磨できる環境を作ります。